Branchではこれまで、お子さんが「学校に行きたくない」と言って登校しぶりを起こしたり、不登校になったりしたご家庭のエピソードを集め、その原因や対処法をご紹介してきました。
Branchを利用される保護者さんたちにお話を伺う中で見えてきたのは、「学校に行きたくない」と、お子さんが言葉で表現する前に、実は身体の症状というかたちで、登校への拒否反応が出ていることも少なくない、ということです。
この記事では、Branchの保護者アンケートを元に、子どもの登校しぶり・不登校の前後に見られた身体反応を分類してご紹介します。
お子さんが発するサインに早期に気づき、ケアにつなげるための参考にしていただければ幸いです。
登校しぶり・不登校の前後に見られる、子どもの身体症状例
服が着られなくなる
- 我が家の場合は、最初は「服が着られない」と訴えるところから登校しぶりが始まりました。
※以下、見出し・画像の下の箇条書きは、保護者アンケートで寄せられた声の抜粋紹介となります。
頭痛や腹痛
- 頭痛や便秘の症状のほか、手足に湿疹も出来ました。
- 腹痛と頭痛が見られました。
爪噛み
- 爪噛みをしすぎて、爪がほとんどない状態になりました。
- 机の裏などに爪をこすり付けて研ぐような行為が増え、常に爪が短い状態でした。
夜泣きや、夜驚症のような症状
- 夜中に「足が痛い」と泣いて起きるなど、夜驚症のような症状が出ていた時期がありました。
吃音・どもり
- どもっていた時期もありました。
- 幼稚園入園前と年少のときに吃音がありました。自然に治りましたが、今思うと幼稚園生活への不安などから起こったものなのかなと思います。
トイレが近くなる
- 不登校のとき、そして情緒支援級に行き始めた1年間くらい、トイレに何度も行っていました。多いときは夜は5分に一度くらいの頻度でした。
チック
- 肩をまわすチックのようなものが出たことがあります。
- 目のチック症状がありました。
- 服の襟をしゃぶる、鼻を鳴らすなど、チックのような症状が出ていました。
- 学校に通っていた頃、クラスや担任など環境が大きく変化すると、しばらくチック症状が出ていたことがありました。
食欲不振
- 登校しぶりの頃は、ずっと食欲がありませんでした。
- 食欲がなく、学校の給食を嫌がっていました。
母子分離不安
- とにかく私と離れるのが怖いようでした。
- 一番大変な時期は、電話に出るのも買い物にでかけるのもできませんでした。
偏食
- 白米、うどんなど絶対に自分が安心なものしか食べなくなりました。
涙が出る
- 不安が強く、「死にたい」と言ったり、突然涙を流したりしていました。
吐き気
- 学校に行く直前はいつも吐きそうになっていました。
[その他]
上に分類した以外にも、以下のようなエピソードが寄せられました。
- イライラ、癇癪、暴言、無気力、無言、幼児退行、爪噛み、抜毛などが起こりました。
- 怒りっぽくなる、朝起きられない、ずっと歌っている、ファンタジーの友達の話をする、といった精神的な不安定さが多かったです
- だるいと座っていられない様子でした。他にも、外出が減る、ささいなことでも不安になる、自己否定する、人から「睨まれている」と感じるなど被害妄想的になる。イライラして怒りやすくなる、など色々な症状が出ていました。
- 不登校になった当初は、常にイライラや不安を感じている様子で、すぐに癇癪を起こしていました。その後、コロナをきっかけに強迫症状が強くなりました。
身体反応が出ているのに、「学校に行きたくない」と言葉にしないのは、なぜ?
ここまで、登校しぶりや不登校の前後に見られたお子さんの身体反応の例をご紹介してきました。ただ、これらの症状が出ているからといって、必ずしも登校ストレスが原因とは限らず、他の病気に関連する症状である可能性もゼロではありません。学校を休ませてからも症状が続く・悪化する、他に心当たりのある原因がある、その他、不安になることがあるときは、早めにかかりつけ医にご相談してみてください。
以下では、お子さんがこうした身体反応に続いて登校しぶりを起こしていたり、言葉には出さないけれど、学校に行くことに抵抗感があるように思われるとき、なぜ身体反応が出ているのに「学校に行きたくない」と言葉で表現することがないのか?という疑問に対して、考えられる背景要因を紹介します。
低学年で語彙が少ない
お子さんが小学校低学年であれば、まだ語彙そのものが少なく、「学校に行きたくない」という自分の気持ちやその理由を、伝えたくても言葉で表現することが難しい、という場合があります。
「いい子でいなきゃいけない」「学校は行くべきもの」という通念から、自分の気持ちを抑えつけてしまっている
気持ちとしては「行きたくない」と思っているんだけど、「そんな風に思ってしまう自分は悪い子だ」と気持ちを押し留めて、身体症状が出てしまっている場合です。
こちらは、小学校高学年以降から中学生くらいのお子さんに多いパターンだと言えます。両親や学校側からのプレッシャーによって、自分の本当の気持ちを伝えられない、という状態です。
行きたいけれど、感覚過敏などで疲れてしまう
何かしらの感覚過敏などがあり(聴覚過敏など)、学校という場で過ごすこと自体が、かなりの負荷になってしまっている場合です。
お子さん本人も、気持ちとしては「学校に行きたいし、行くと楽しい」と思っているものの、実際に行ってみると刺激が多く、帰ってきてから疲れ切ってしまい、身体症状が出てしまうという状況です。
人間関係などで嫌なことがあるけれど、それを表現できない・したくない
中学生〜高校生くらいに多いのがこの理由です。
いじめほどでないにしても、自分の嫌いないじられ方をされていたり、仲良かった友だちと疎遠になってしまっていたりなど、本人としては「ちょっと嫌だな」と思う気持ちがあるけど、話したら「そんなことぐらいで」と軽く受け取られてしまうのではないかと思い、家族に話せないでいる、ということがあります。
この場合は、無理やり聞き出そうとはせず、まずは安心して休める環境をつくった上で「話したいことがあったらいつでも聞くからね」という姿勢を伝えていくなかで、お子さんが話しやすいタイミングでゆっくり話を聞いてあげてください。低学年と違い、本人から話を聞くことさえできれば、原因が分かる場合が多いです。
登校しぶりの身体反応が出たときに、どんな対応をするべきか
登校しぶりの前後にこうした身体反応が見られ、まだお子さんが言葉で表現をしていない場合、保護者はどんな対応をすれば良いのかをお伝えします。
1. 保護者の目から見て、「これは一回休ませた方が良いな 」と思うほど疲れているようだったら「学校休んでもいいからね」と声をかけてあげる
まず一番大事なのは「休んでもいいんだよ」と伝えることです。
言葉にできないだけで、保護者さんの目から見て明らかに異常がある場合は、休むことを促すようにしましょう。
2. 学校での過ごし方を聞いてみて、本人が言語化できそうな範囲で「なんで疲れているのか」を聞いてみる
しばらく学校を休ませて、お子さんの元気が少し回復してきたなと思ったら、お子さんの話せる範囲で、少しずつ理由を聞いてみてください。先にお伝えした通り、言語化できない理由や場合もありますので、無理は禁物ですが、子どもの話からわかった内容によっては、学校側へ合理的配慮の相談をして環境を変えることで、登校しぶりの原因を取り除くことができる場合があります。
3. 発達検査を受ける、専門医に診てもらうことも検討する
発達の凸凹が大きいお子さんの場合、学校の環境がその子に合っておらず、つらくなって身体症状が出ている場合もあります。お子さんの様子から発達が気になる場合は、発達障害の専門医がいるクリニック・病院を予約し、発達検査を受けたり、医師に相談してみてください。
子どもに身体反応が出たあとの、保護者の対応例
Branchを利用する保護者さんたちが、お子さんの身体反応に気づいたあとにどのように対応したかもご紹介します。お子さんやご家庭ごとに状況も原因も異なるため、あくまで参考例としてご覧ください。
- まず、ゆっくり休ませました。その時は、子供の中にある特性にどう対応したら良いかわからず、自治体の子供相談ダイヤルに電話したり、とにかく周りに相談をしました。その後、小学校に上がる前に行う就学相談でWISC検査をして凹凸が見つかり、同時進行で児童精神科とも繋がりました。
- 友人に相談したり、ネットで調べました。こちらが気にしすぎると、子に伝わるので普通に生活するようにしていました。
- 発達専門小児精神科医、カウンセラーなどに相談しました。
- 児童精神科の主治医に相談しつつ、なるべく本人のストレスを軽減できる様な環境を整えようと夫婦で話し合いました。最初は手探りで夫婦間で意見が合わない事も多かったので時間はかかりましたが、Branchの保護者さんのお話もたくさん参考にさせて頂きました。
- 偏った食生活になるが、本人が安心できる状態になるまで無理強いせず白米、うどんのみを続けました。
- 家の中でリラックスして居心地良く過ごせるようにと思っていますが、今もうまく対応できているのか常に悩んでいます。
- 子供の不調を目の前にして、親の私が不安定になってしまいました。学校の担任、校長、スクールカウンセラー、自治体の教育センターのカウンセラー、医療機関それぞれに今も相談しています。私達親子を良く知っている信頼関係にあるママ友達にもだいぶ話を聞いてもらいました。
- 吃音について指摘しないようにして、厳しく接してしまったのかなと反省し、普段以上に優しく接するように心がけました。
身体反応が出ていたお子さんの、その後の経過
以下では、Branchに通っているお子さんたちの、身体反応が出て学校を休んでからの経過をご紹介します。こちらも個人差があるため、あくまで一例としてご参考にしてください。
- 安心できる人や友達ができてから、いつのまにかなくなっていました。
- 癇癪や暴言は続いていますが、爪噛みの頻度は減り、他愛のない話もできるようになってきました。幼児退行も一時期よりは良くなってきている気がします。抜毛は無くなりました。
- ストレスの要因として集団生活がありました。子供達の声や、先生からの指示や周りに合わせる事にとても疲弊していて、予想外の事が起きた時の不安が強いので、毎日大変だったのだと思います。集団生活をやめて、自宅で過ごすうちに改善していきました。
- プールや川で遊んでいる間は目のチックはあまり出なかったので、回数を増やしていき、月日が経つと自然となくなりました。
- 無理せず、学校や通級は休み、会うと具合が悪くなる人と会うことはお休みし、安心安全にゆっくり家で過ごしていたら、落ち着いてきました。
- 通院して服薬を始めた事もあり、イライラや癇癪は落ち着いていきました。
- 不安は対象が変わりながらも時間をかけて少しずつ改善しています。不登校になった当初はほんの2、3分の留守番も出来なかったのですが、今は半日でも大丈夫になりました。
- 強迫症状に関しては現在も続いてますが、善くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ少しずつ改善しているかなと思っています。
お子さんが「学校に行きたくない」と言葉にはしていないけれど、何か「おかしい」と感じる身体反応が出ていたら、まずはゆっくり休ませてあげることをおすすめします。この記事を参考に、お子さんの様子を見て声かけをしてみてください。
発達障害や不登校の子の「友だちができる。安心できる居場所」とは?
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