学校に行っていないと周りに知られると「そんなの甘えだよ」と言われてしまい、つらい経験をされた方がたくさんいらっしゃいます。
また、少し調べるだけでも「不登校は甘えだ」「親の愛情が足りないから、親に甘えてるんだ」など、むごい言説が飛び交っています。
つらいのは、学校に行けない本人だけではなく、保護者さんたちもそうです。
今回の記事は、「学校に行きたくないのは甘えなのかな?」と迷っているお子さん本人、「学校行けないなんて甘えだ」と周りに言われてつらい思いをしている保護者さんに向けて書いています。
お子さんが学校に行かなかったり、行き渋りをすることについて「甘えだ」と周囲の方に言われたことはありますか
では、学校に行かないことに対して、世間はどのように感じているのでしょうか。
Branchの保護者さんに聞いてみました。
- 【言われたこと】
最初の頃は夫がそういう認識を持っていました。「嫌なことがあっても我慢して行くべき」「我慢することも覚えないと生きていけない」「家が快適だから行かないんじゃないの」といった発言は度々ありました。また、実家に帰省した時には、私の実父からも同じようなことを言われました。
【対応】
甘えなのではなく、ずっと我慢してきた結果こうなっている(心の不調、死にたいという発言)、むしろ我慢強い子なんだ!と主張しました。子どもの代わりに私が訴え続けなければと必死で、時には泣きながら話すこともありました。つらくて悔しくて。
ほかには不登校や発達障害に関する本を読んだり、メディアで不登校の情報に触れたりすることで、少しずつ認識が変わってきているように思います(多分)。 - 学校を休み始めた頃、ママ友から「多少無理してでも行かせた方が良いと本で読んだ」とアドバイスを受けました。我が家としてはあらゆる手を尽くした結果の事だったけれど、それでも「厳しさが足りない」「親が子どもの言いなり」と捉えられていると感じ、すごく悲しかったです。(今となっては、厳しさでは解決しないと学びました。)その場は「色々やってきた結果なんだけど…」と苦笑いでやり過ごしました。
後から思えば、悪気は無く事情がわからないから、自分の知識や考えを伝えてくれたのだと思えるけれど、当時は少し距離をおきました。 - 行き渋りが始まった小1の時。無理やり学校に置いてきた時、担任の先生に、「お母さんお母さんって言ってますよ。」と言われました。その言い方は、「一年生になったのに、まだお母さんお母さんってね。いつまで言ってるのよ。」と我が子を甘ちゃん扱い。私もどうしたらいいか分からずいたので、「甘えなのか。じゃ、厳しくしなくちゃ。」と思ってしまったのを、後になって反省し後悔しています。約4年経った頃、我が子は発達凸凹で学校に適応するのがしんどくて、私に助けを求めていたと、気づきました。
- 甘えだと言われたことあります。
まだ自分に知識がないとき甘えなのかそうではないのかが、分からずその時は言い返せず、とても悩みました。
ただそれらの経験から沢山の本や勉強会、講演会を聞くようになりました。
それからは甘えだと言われても、甘えとかではないと伝えられるようになりました。
「学校行かないなんて甘えだよ」「もっと厳しくするべきだよ」などと周りに言われると、保護者の方は「何もうちの事情分かってないのに何言ってるんだ」と関係を遮断する傾向にあります。周りの方は言うのを控えましょう。
また、厳しさでは何も解決しません。
学校に行かないことは甘えなのか?
学校に行かないことは甘えではありません。
様々な理由があって、学校に行きたくないのです。
信州大医学部の本田秀夫先生はこのようにおっしゃっています。
登校渋りっていうのは子どもさんにとってはもう「学校に行きたくない」の最終段階なんです。親御さんからすると問題の始まりに見えるけれど、これは子どもさんから見ると問題の最終段階で、「行かなくなった」というのは「“学校に行く自分”っていう人生を捨てた」という、もう最後の段階です。正直、この段階から頑張ってなだめすかして行かせてたらそのうち行けるようになったっていう人はあまりいないので、無理なさらない方が良い気がしますね。
「学校に来れば元気ですよ」は、そのまま行かせて大丈夫?:登校渋りは子どにとっては「学校に行きたくない」の最終段階 – 本田秀夫先生インタビューより
保護者の方からすると突然言われたように感じてしまう「学校行きたくない」の言葉。ですが子ども本人にとっては、「今まで言葉に出していなかっただけで、辛い葛藤を経てやっとお母さん・お父さんに打ち明けている」ということも少なくありません。
「学校行きたくない」と言い出した時点で、すでにいっぱいいっぱいの状態である可能性が高いお子さんに対して、更に登校刺激を続けると、本人のメンタルが更に悪化して二次障害につながる可能性があります。登校の無理強いはやめましょう。
なお、文科省が調査したものによると、不登校理由は下記になります。
最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ(小学生)
- 先生のこと(30%)
- 身体の不調(27%)
- 生活リズムの乱れ(26%)
最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ(中学生)
- 身体の不調(33%)
- 勉強が分からない(28%)
- 先生のこと(28%)
理由がはっきりしない登校しぶりや不登校 背景と対応のコツ
この記事を読んでいる保護者の方の場合、「理由もなく学校行きたくないなんて、やっぱり甘えてるだけなんじゃないか」と思っている方もいらっしゃると思います。
ただ、学校に行きたくない理由を言えない場合も多々あるのです。
小学校低学年の場合
お子さんの年次が低い場合は、そもそもの発達段階として
- 気持ちや理由の言語化がまだ難しい
という場合が多いです。
「学校行きたくないんだ」
「なんで?」
「分からない…」
こういう場合、無理に問い詰めるのではなく、言語以外のお子さんのシグナルに注目することが大切です。
- お腹が痛い
- 服が着られない
- 夜眠れない
などの身体症状が先に出ている場合があります。
こういったときは原因を追求しようにも、言葉にするのが難しいので、まずはお子さんの体や表情を見て休ませてあげましょう。
小学校高学年以降、中学生、高校生の場合
小学校高学年以降の年次でも、理由がはっきりしない不登校・登校しぶりが起こることがあります。
- 言語化する力はあるけれど、言語化できない・したくない理由がある
という場合が多いです。
例えば、
- 親に「なんとなく学校に行きたくない」と言ったら「それは甘えだ」と言われて「自分でもそうだと思い直して反省している」→けどやっぱり行きたくない
- 親や先生に「いじめとかあるわけじゃないけど、学校に行きたくない」と言ったら「先生が中学生の頃も同じようなことがあったけど、○○して頑張ったよ」と言われて「自分もそうやって頑張らないと」と思った→けどやっぱり頑張れない
- 学校に行くとモヤモヤする→本当は人の輪に入っていくことが億劫だったり怖かったりするけれど、そう思うことは「学校の雰囲気的に良くない」と思ってしまっている
などです。
学校に行きたくない理由を言語化する能力は持っているけれど、主に周りの影響で「そう思う/言うことはよくないこと」とされていて、言語化することをためらったり、葛藤したりしている状態です。
保護者に気をつけて欲しい点
上記の例からも分かるように、
- 「学校に行きたくないなんて甘えだ」という認識を持つこと
- 「学校を休むことは悪いこと」という意識を子どもに植え付ける
- 「私だったらこうするよ」というアドバイスをもとに学校に行かせようとする
- 「周りに合わせられない自分を許してはいけない」と思わせる
ということは、「行けない理由を子ども自身が見つける」という能力を奪うことになりかねません。
フラットに、その時のお子さんの様子、言動、表情を見て、お子さんのそのままを認めてあげてください。
「なんとなく」でも、学校に行きたくない理由があるのです。
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大人に「学校行きたくないなんて甘えだ」と言われてしまい、どうすればいいか分からないお子さんへ
LINEで相談できる場所がある
ここまで、保護者の方向けのアドバイスを書いて来ましたが、「親や先生には相談できない」と思って、苦しい気持ちになっているお子さんが、偶然この記事を見つけた、ということもあるかもしれません。
ここからは、そんな今まさに「学校に行きたくない」と思っているお子さん本人に向けたメッセージです。
親や先生には話しにくいときでも、学校の外の大人にLINEで相談できる場所があります。
親や先生に相談内容がバレることはないので、安心して相談してみてください。
どこも「無料」で、「相談内容は秘密」にしてくれます。
チャイルドライン
ユキサキチャット
わかものメンタルサポート協会
言えない本音があったら書き出してみよう
- 親から「甘えだ」と言われて考えるのやめた
- 「学校に行くのは当たり前だ」「周りに合わせることができないと、良い大人になれないよ」などと言われて、考えるのをやめた
- 自分が「学校に行きたくない」と考えることはよくないことだと思っている
そんな状況ではありませんか?
もし可能なら、一度周りに言われたことを忘れて、「本当はこう思ってる」ということを書き出してみてください。
- 実は苦手な友だちがいる
- 学校の教室の匂いやガヤガヤが苦手
- 仲良くしてくれる友だちがいるけど、毎日一緒は嫌だ
- 相手は「いじってる」つもりだけど、自分は嫌だ。(本当はいじめかもしれない)
どうして学校に行きたくないのか、自分に素直になって言語化してみましょう。
かっこいい理由じゃなくても大丈夫です。
「本当はずっと寝ていたい」という理由だって、立派な理由だと思います。
自分の中で、学校に行けない理由が分かってきたら、その理由をご両親や先生に話してみてください。上に書いたような相談先に相談してみるのも良いと思います。勇気を出して言葉にすれば、解決できる方法や、改善できる方法が見つかるかもしれません。
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