こんにちは。不登校や発達障害のお子さんと保護者さんのための居場所、Branchコミュニティ、保護者ライターのしましまです。今回は、保護者さんインタビューです。数年にわたってBranchを利用している現在小学校6年生のSくんが、「好き」を通じて人間関係と行動範囲を大きく広げていったエピソードをお伝えしたいと思います。
お子さんのプロフィール
- Sくん(2011年生まれ/インタビュー当時小学校6年生)。
- ASD、ADHDの診断あり。
- 現在は野球に夢中。これまでも鉄道、戦国武将、ポーランドボール、コンビニ、宗教、政治、地理、洋酒、漫画、ゲーム機、野球、廃墟 など、これまで好きになってきたものは様々。
- 好きなものと出会うきっかけとしては、YouTubeが多い。
- 幼少期は、2歳から字が読めていたこともあり図鑑や本が好きなものとの出会いのきっかけになっていた。
保護者さんから見て、Sくんはどんなお子さんですか
おもしろい子です。「子どもって普通こうだろう」「こういったものが好きだろう」という親の考えがことごとく外れます。自分と違っているところがおもしろいです。
歩き始めた1歳頃のエピソードですが、公園に連れていくと注意書きの看板のところにまっしぐらに行くんです。ずっと見ているのでそれを読み上げると大笑いしていました。そんなことが山ほどある子です。
家庭では困りごとなし!でも学校ではトラブル続きだった過去
家庭では穏やかに過ごしている
Sは家庭では穏やかに過ごしていて、家族もSについて全く困ってません。母親である私はSをとてもおもしろいと思っていて、自分とは全く違うので尊敬していると同時に憧れている部分もあります。父親は、Sが現在夢中になっている野球観戦に一緒に出かけることを楽しみにしています。家族に対しての暴言は全くありません。
トラブル続きの小学校生活
幼稚園はのびのびした園だったので、Sは自由に過ごせ、トラブルもほぼありませんでした。
小学校に入学した途端にトラブルが起こるようになりました。暴言や、パニックになりクラスメイトにはさみを向けてしまったこともありました。私は周囲の保護者の方に理解を得るために、Sの特性について説明していました。
息子のイライラの原因
- 自分のペースで過ごせないこと
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一番のイライラの原因はマイペースに過ごせないことでした。やり方やタイミング、ふざけたノリなどが合わないことが苦痛でたまらないようでした。
- Sの気持ちが伝わらないこと
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SにはSの理論があり、それを聞くと納得できます。でもそれが周囲に伝わりにくく誤解されてしまって、悲しさから暴言になってしまうことが多かったです。
「学ばないといけないから」と登校を続けた
学校で友だちは全然できず、Sも友だちを必要としていなさそうでした。
Sは支援級に在籍していますが、支援級の子どもも100%通常級で過ごす学校なんです。決して悪い環境ではなく配慮もありましたが、それでも学校という社会で過ごすのはとてもしんどいことで、トラブルは多かったです。
もともと入学前から「きっとSは不登校になる」と思っていて、フリースクール等を調べていましたが、予想とは反対に学校には登校していました。辛そうに見えるので「休んでいいよ」と思うのですが、Sは
- 学ばないとならないから
- 休んだら弱いと思われる、弱いと思われたくないから
と言って登校していました。そしてトラブルが起きる。
家庭では穏やかに過ごしているからこそ、学校でのトラブルが辛かったです。
好きなことを伸ばしてあげたいとBranchに入会
Sの好きなことを伸ばしてあげたいと思って色々調べていたので、随分前からBranchのことは知っていました。2020年、Sが3年生のころにオンラインコミュニティができ、好きが共通する大人と関われるメンターサービスを利用するために入会しました。
メンターサービス
Branchに入ったころ、Sは戦国武将にハマっていたので、日本史に詳しいメンターさんと話をさせたいと思いました。とにかく思いっきりしゃべらせてあげたかったんです。Sはオンラインでメンターさんと楽しそうに話していました。その後、数回メンターサービスは利用しました。
オンラインコミュニティ
オンラインコミュニティでは、Sは目立って活動するタイプではありません。月1回のあつもり部(あつまれどうぶつの森で遊ぶ部活)のイベントには参加しています。
でも、野球にハマってからは、野球部で自分からほかのお子さんや保護者さんに質問を投げかけて自分からコミュニケーションを取っています。
野球を好きになって大きく変わっていった
これまで色々なものにハマってきたSくんでしたが、小学校5年生の終わりに野球と出会ったことで、彼自身は大きく変わっていきました。
野球との出会い
YouTubeで「ウマ娘」の二次創作に野球の球団が出てきて、その応援歌が気に入り「試合を見に行きたい」となったことがきっかけです。そこで父親と甲子園球場に行ったところ、たまたま席が応援団の真後ろだったそうです。それが目覚めの瞬間だったんだと思います。
「あの景色は忘れられません」と言っていました。私自身がSと同じ10代前半に初めてライブに行った時のことを思い出しました。その感覚と同じだと思っています。
野球で人と繋がる喜びを知った
球場で観戦していると、点が入った時に隣の知らない人とハイタッチしたり、みんなで一緒に応援したりします。そういったことを通して「人と喜びを分かち合うこと」や「一緒に応援すること」の楽しさを知ったようです。
外出先での繋がり
Sはオリックス・バファローズのファンなのですが、その前身の近鉄バファローズの帽子とユニフォームを着て観戦に行くんです。そうすると近鉄時代を知っている年配の方から話しかけられるんですね。Sにとってはそれが嬉しい。さらに野球はファンの人口が多いので、あちこちで色々な人とコミュニケーションを取る機会が増えました。
学校での繋がり
驚くことに、学校でもクラスメイトと野球を通して会話ができるようになりました。「昨日負けて残念だったね」と声を掛け合ったり、友だちがSの誕生日にプロ野球カードをくれたりと、これまでだったら信じられないような出来事がたくさん起こりました。
ご近所での繋がり
放課後デイサービスの先生の友だちが某球団のコーチをしていて帽子をくれたり、近所の飲食店のご主人がドラフト会議までいった方だったりと、人間関係が広がり、深まりました。
自分で「行きたい」と思う場所ができた
これまでSの好きなことはインターネットと本の中で完結していました。それが、野球を好きになったことをきっかけに、自分から「どこどこに行きたい」と言って出かけるようになりました。
自分で調べ、自分で行く
自分で自転車や電車に乗って球場を見に行ったり、バファローズの展示をしているショッピングモールに行ったりしています。
出かけた先で出会った野球ファンと交流する
野球とほぼ同時に「廃墟」にもハマり、廃墟や跡地を見にも行っています。さらにそこで出会った野球ファンとも交流もしてきています。
「この子、ひとりでも生きていかれる」と思った
野球をきっかけに大きく変わったSを見て「この子、ひとりでも生きていかれる」と思えるようになりました。野球を好きになったこの1年ですごく変わりました。
トラブルを自分で解決する強さを持っていた
私と一緒だったとしても、たった一駅乗り過ごしただけでパニックになっていたSが、今では外出先での思いがけないトラブルもひとりで解決してくるんです。
電車の乗車証を紛失!自分で駅員さんに相談して解決
電車に乗るための乗車証を外出先で落とした時も、自分で駅員さんに相談して解決して帰宅しました。
自転車が駐輪違反で撤去!自分で管理事務所に行き解決
自転車を駐輪禁止の場所に駐輪してしまい、撤去されてしまったこともありました。それも一人で管理事務所に行き、返却してもらってきました。
Sの中にもともとあったものが解き放たれた感じ
もしかすると既にSの中では変化していたのかもしれません。でも私がそれに気づいてやれなくて「この子にはまだ無理」と思っていました。
今は、母親の私でもできないようなことを自分で考えてやるようになりました。とても頼もしいです。安心していられます。Sがもともと持っていたものが解き放たれた感じです。
「私がやってあげないと」「探してあげないと」と思っていましたが違いました。
Sは勝手に見つけて勝手に出かけて勝手にやっていきました。その姿を見て、私もSから手を離せました。私がバタバタもがいていたけど、それはいらなかったんだなと思いました。
保護者の気付き 「検査の数字じゃなくて子ども自身を見よう」
「エジソンの母にならなければ」と思っていた
Sは2歳で文字を読み始めました。早いうちから医療機関ともつながっていて、検査の結果から
- 能力が高いからうまいこと育ててください
- 受験を検討したり、好きなことを伸ばしたりしてください
と言われていました。
私も、検査結果の示す数値や周囲の意見にとらわれて
- 世の中のIQの高い子みたいにしてあげないといけない
- エジソンの母にならなきゃいけない
と思っていました。でも実際のSは、興味のある分野以外は勉強が特別できる感じでも、天才的な感じでもありません。もし能力があるのに開花しなかったとしたら、それは私のせいだろうと思っていました。
検査の数値がどうであれ、目の前の息子は変わらず個性的で尊い存在だと気付いた
先日、2年ぶりにWISCを受けたところ検査結果に変化があり、凸凹がなだらかになっていました。人と違う息子のユニークさを誇らしく思っていたのに、なだらかになったWISCのスコアを見て価値が損なわれたような気持ちになり、そんな自分に心底失望しました。ただ、同時に夫に言われていた言葉を思い出しました。
「数字を見すぎ。本人を見よう」
やっとその言葉の意味が腑に落ちました。
検査の数値がどうであれ、目の前の息子は変わらず個性的で尊い存在だったんです。
保護者としてできることと、子ども本人に任せること
これまでも特色ある放課後デイサービスを見つけてはあちこち連れて行ったり、私がやってあげなければと色々情報収集してきました。それを経ての野球との出会いだったと思う反面、Sが自分で見つけてきた野球、そしてその出会いをきっかけとしたいろいろな変化のことを思うと、そんな一生懸命やらなくてもよかったのかなとも思ったりします。
保護者のねがい
好きなように生きてほしい。楽しみをその都度持って生きていってくれたらいいと思う。
同じ悩みを抱えている方へ「育つと信じてゆったりすごしてほしい」
本当にSは野球と出会って「羽ばたいた!!」という感じでした。私が「こうしてあげなきゃ」と思っていたのが、今となっては滑稽に思えます。
自分はうまくできなかったんですが、保護者が楽に過ごすことが大事だと思います。できる限りゆったりストレスをためずに過ごしてほしいです。種をまいて水をあげて、栄養をあげていたら、子どもは勝手に育つよ、と伝えたいです。
「育つ」と信じて!
「好き」で安心とつながりを育むサードプレイス
この記事を書いているBranchは、不登校・発達障害のお子さま向けの「学校外で友だちができる」Branchコミュニティを運営していて、以下のような特徴があります。
- 「学校行きたくない」という気持ちを抱え、家族以外の人との関わりが減ってしまった不登校のお子さま達が自分の「好きなこと」をきっかけに安心できる居場所や、友達ができるようなサービス。
- NHKや日テレなど多くのメディアにも紹介され、本田秀夫先生との対談や、厚生労働省のイベントの登壇実績もあり、サービス継続率は約95%以上。
- 小学校低学年のお子さまはもちろん、どんな子でも楽しく参加できるようにスタッフがお子さま一人ひとりに寄り添ったサポートを徹底。
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