息子の癇癪に、親の私も怒りを誘発され、悪循環に…
現在10歳(小学5年生)の息子は、幼少期から癇癪(かんしゃく)が激しい子でした。私にとってはほんのささいなことでも、「この世の終わり」とでもいうように大声で泣きながら走り出して暴れる息子に、私は疲れ切り、更に息子の癇癪に私自身の怒りが誘発されるという悪循環に陥っていました。
もちろん、息子の癇癪が起きないよう私なりに工夫していましたが、なかなか根本的な解決には至りません。癇癪を起こす息子に対して、私が結局我慢しきれずに怒ってしまう日々は変わらず、それどころか、息子が小学校に入学してから衝突は一層激しくなり、いつか親子関係が破綻してしまうのではないか、と不安な気持ちでいっぱいでした。
怒りは「二次感情」であると知り、親子の行動の背景を分析
「このままでは親子の信頼関係が壊れてしまう」と思った私は、まずは自分の怒りだけでも何とかしたいと思い、アンガーマネジメントについて調べ始めました。
その過程で知った「怒りは『二次感情』であり、その根底には、本当の気持ちである『一次感情』がある」ということが、癇癪を解決する鍵となりました。
「一次感情」と「二次感情」。この考えに基づいて息子と自分の怒りを紐解くと、その構造は下記のようになっていました。
- 息子
- 予想外のこと(算数の宿題の問題数が思っていたより多い、ハンバーガーの見本に苦手なトマトが入っている)が起きる
- 不安(こんなにたくさんの問題解けない、トマトが入っていたらハンバーガーが食べられないかもしれない)を感じる
- 不安が癇癪となって表れる
- 私
- 息子が癇癪を起こすのを見る
- 辛さ(癇癪を起こす息子を見ているのが辛い)、不安(いつ癇癪が終わるのかわからない)、悲しみ(私が親としての至らなさを責められているようだ)を感じる
- 辛さ、不安、悲しみが怒りとなって表れる
まさに、一次感情が二次感情である怒りに変わっていたのです。
この一次感情をそのまま表現できれば癇癪は改善するのでは?
その手段を考えたときに、私が参考にしたのは「アサーション」でした。
「お母さんは辛いんだ」自分を主語にして気持ちを伝える
アサーションとは、「自分も相手も大切にするコミュニケーション」と言われており、コミュニケーションのタイプを以下の3つに分けています。
- アグレッシブ(攻撃的なコミュニケーション)
- ノンアサーティブ(自分の気持ちを抑え込んでしまう非主張的なコミュニケーション)
- アサーティブ(相手の気持ちを尊重しつつ、自分の気持ちを率直に主張するコミュニケーション)
癇癪のたびに親子で衝突していたこの時期、息子も私もアグレッシブなコミュニケーションをしていました。
そこでまず、私自身がアサーティブになるために「I メッセージ」で自分の気持ちを伝えることを始めました。
これまでの私は息子に対して息子を主語にした「You メッセージ」でコミュニケーションをしていましたが、それを、自分を主語にした「I メッセージ」を使った表現に変えてみました。
- You メッセージ
- 「そんなことで怒らないで」
- 「いちいち泣かないで」
- I メッセージ
- 「癇癪を起こしている姿を見るのは、お母さんは辛いんだ」
- 「大声で泣いて暴れないとお母さんは分かってくれない、って言われているように感じてしまうんだ」
癇癪を起こしていても息子は私の言葉を聞いています。
「You メッセージ」だと息子を責める表現になっていたため癇癪は激しくなる一方でした。
自分の一次感情に注目し「I メッセージ」で気持ちを伝えることを意識すると、徐々に息子も私の言葉に対して言葉で反応を返してくれるようになってきました。
子どもが自分の感情に気づき、言葉にするためのサポート
「I メッセージ」でのコミュニケーションを始めて見えてきたのは、子どもの気持ちを代弁することの意味でした。
周囲の人が子どもの気持ちを想像して代弁することが、子どもが子ども自身の一次感情に気付くきっかけづくりになると分かったのです。
息子が自分の一次感情に気付いて、それを言葉で伝えられるようになれば、何かが変わるかもしれない。
そこで、次は息子の癇癪が治まった後、気持ちをフィードバックする際に、息子の一次感情を代弁すると同時に、一次感情の伝え方を具体的に教えるようにしてみました。
- 気持ちの代弁
- 「(計算ドリルの)問題が多すぎるんだね」
- 「ハンバーガーにトマトが入っているかわからなくて不安なんだね」
- 具体的な伝え方
- 「『計算ドリルの問題が多すぎるから、少なくしてほしい』って言うんだよ」
- 「『ハンバーガーにトマトが入っているか教えてください。入っていたらトマトは抜いてもらえますか』って聞くといいよ」
また、在籍している支援級担任から、気持ちを1〜10段階で表現する方法を教えてもらい、家庭でも実践しました。
この対応を続けていくうちに、息子の様子は変わっていきました。
まず、自分の「イライラ度」を言語化して、それがMaxになる前にクールダウンするという予防策がとれるようになりました。
そして、徐々に気持ちを言語化して伝えてくれるようになりました。
これまでだったら泣き叫びながら走り回っていたようなシーンで、泣きながらも「ぼくはほんとうはすごく悲しいんだよ!」などと言葉で伝えてくれるようになったのです。
- 「ぼくはすごく悲しいんだよ」
- 「あぁ、イライラする!」
- 「正直に言うね、本当はものすごく嫌だと思っている」
- 「本当は殴りたいくらい嫌なんだよ!」
- 「その言葉は嫌だったから謝ってほしい」
- 「今イライラ度レベル3だから、もうやめる」
そして現在、癇癪はほぼなくなりました。
もちろん今でも、苦手なことやトラブルがあると気持ちが荒れてしまうことはあります。
つい先日も、ゲームで負けが続いてイライラした息子が「あーイライラする。負けまくって悔しいんだよ!」と言葉にしたところからこんなコミュニケーションが生まれました。
息子「あーイライラする。負けまくって悔しいんだよ!」
私「負けまくったんだ。それは悔しいね」
息子「マジ悔しいんだよ。ストレス発散に台パンしていい?」
私「ゲームや家具が壊れると困るな」
息子「じゃあ、壊れない程度にやるね(と言ってテーブルを軽くパンチ)」
これまでだったら癇癪になっていた場面でしたが、悔しい気持ちを言語化してくれたおかげで、親子共に落ち着いてコミュニケーションできました。
あの日、癇癪まっただ中の私たち親子にこんな日が訪れるなんて、信じられないような気持ちでした。
癇癪が起きると、子ども自身はもちろん、保護者も心身ともに疲弊してしまいます。
癇癪の対応策として色々な方法が挙げられていますが、完全に予防したり、短時間で終わらせるための万能薬も特効薬もありません。
保護者は終わりが見えない不安と辛さに絶望的な気持ちになることもあります。
子どものことを思って、時には保護者自身の気持ちに蓋をしてでも、子どもの感情を受け止めることもあるし、逆に強い言葉や態度で子どもをねじ伏せてしまうこともあるかもしれません。
でも、本当は子どもも自分も大切にして互いに笑っていたい。私はそう思っていました。
近くにいると見えにくくても子どもは確実に日々成長していて、その日はきっと来ます。
この経験は我が家の個人的なものですが、今、癇癪で辛い思いをされているお子さんと保護者さんにとって、日々を乗り越える糧の一つになれば幸いです。
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