発達障害や不登校のお子さんと保護者が集い、部活動や悩み相談ができるBranchオンラインフリースクールでは、毎月さまざまなテーマで「保護者会」を開催しています。
この記事では、「こだわりと強迫性障害」をテーマに扱った、2021年4月の保護者会の様子をお届けします。
本題の強迫性障害については、Branchスタッフからの講義の後、参加者の困り事の共有と相談を行いました。
強迫性障害ってなに?
■強迫性障害とは?ふたつの症状について
強迫性障害は、以下の2つの症状を特徴とするこころの病気です。
①強迫観念
その内容が「不合理」だとわかっていても、頭から追い払うことができない考え。
②強迫行為
強迫観念から生まれた不安にかきたてられて行う行為。自分で「やりすぎ」「無意味」とわかっていてもやめられない。
例)不潔恐怖と洗浄、戸締り等の確認行為 etc.
■強迫性障害になりやすい人って?
几帳面な人や完璧主義の人が強迫性障害になりやすいといわれていますが、こういった性格の人すべてが発症するわけではなく、その他の要因や環境との相互作用によって症状があらわれると考えられます。
■強迫性障害への対応は?
自分でも分かっていて、それでもやめられない強迫行為を「無意味だ」と単に指摘するのは、本人をつらい気持ちにさせてしまいます。
まずはストレスを和らげること、そして集中できる他のことで気をそらす時間をつくることが大切です。
■治療が必要な場合って?
症状の頻度や程度がエスカレートしてしまい、
- 本人がやめたいと思っている
- 日常生活、社会生活に影響が出ている
- 家族や周囲の人が巻き込まれて困っている
という状況の場合、精神科や心療内科、発達外来、思春期外来、かかりつけの小児科などに相談しましょう。
■症状に当てはまらないこだわりに対しては?
本人が特にやめたいと思っていないこだわりの場合は、保護者のみなさんもいつも向き合っていらっしゃることだとは思いますが、
- できるだけ見守る
- 少しずつ折り合いを見つけていく
といった対処になりそうですね。
参考:
厚生労働省, みんなのメンタルヘルス, 「強迫性障害」(外部リンク)
LITALICO発達ナビ, 強迫性障害 (強迫神経症) とは?症状・引き起こす要因・治療・相談先・周りの人の対処法まとめ(外部リンク)
これって強迫性障害?気になる子どもの様子を共有
以下では、保護者会当日に共有された、心配に感じているお子さんの様子をご紹介します。
■コロナをきっかけに……
「飛沫を強く気にしてしまう時期があり、きょうだいゲンカの要因になっていた」
「新年度にみんなマスクをつけている光景がよほど衝撃的だったのか、学校に行けなくなった」
「学校で飛沫への恐怖から、『綺麗になるため』と水をかぶり、ソーシャルディスタンスが取れない教室内にはいられず、廊下・図書室・保健室で過ごしていた」
「帰宅後すぐにシャワーを浴びることを私(母親)に強要。玄関からお風呂場まで3歩で行かなきゃいけないというこだわりも強く出た。本人はベランダにすら出られず、自宅に家族以外の人が入るのも拒否していた。学校や病院に行けない状況で困ってしまった」
新型コロナウイルス感染症に関連する話題は複数のエピソードが出てきて、共感される方も多かったようです。
一方でこんな見方もありました。
「コロナもあるけどその前から、死に関連付けて4と言う数字への恐怖や、妹の足が触れると『汚い』と言ってたたくなどの様子があった。症状の対象が変わっていっているだけかもしれない」
不安な気持ちの表現の出口が、不潔恐怖や洗浄行為になっているのかもしれませんね。
■”滅び”へ対する漠然とした大きな不安
「以前より日常の小さなことは気にならなくなったけど、恐竜の動画を見てから隕石が落ちたらどうしようという不安に駆られている。”死ぬ”とか”終わり”とかのワードが気になってしまう。なかなか他に取り組めることがなく、気持ちが紛れないでいる」
「天災や事件に巻き込まれる、地球が止まるんじゃないか、死ぬんじゃないかという恐怖が常につきまとう。本人も絶対そうじゃないと分かってるけど不安。寝ることへの不安や恐怖もある」
気持ちの安定や、他に取り組めることに目を向けるのも必要ですが、まずは受け身的でも「身体がリラックスできる」方法を取ることもひとつです。例えば、ハンモックやふわふわの毛布など好きな感覚を得られて安心できる環境に身を置くといったことです。
他の保護者からは、「恐竜の絶滅(隕石)についてトコトン調べてみて、今は限りなく確率が低く危なくないことが分かるとどうか?」といった視点での投げかけもありました。「今はまだ調べても不安が拭えきれなさそう。調べることすら拒否するかもしれない」とのことでしたが、お子さんの回復の度合いによっては有効かもしれませんね。
■トイレでの困りごと
「緊張すると特に、頻繁にトイレへ行く。外出に支障が出る」
「トイレで汚れが取れていない気がして拭き続けてしまう。私(母親)が仕上げに拭くことでなんとか安心するが、『またうんちするのが怖い』と言う。外出先では安心してトイレに座れない。自分で出来るようにウェットティッシュも試したけど、感覚過敏も影響しているのか『冷たい』と言ってダメだった。今思えば、私が仕事で外に出たり、学校に行ってほしいと思っていた時期は、我が子の顔色もずっと悪かった。仕事の時間を減らして、『学校に行かなくてもいいよ』と言えてから、最近は少しおさまってきた」
トイレ関連の事例でも、ベースにある不安や緊張が表れているようでした。また、触覚などの感覚過敏ゆえに対処方法を見つけるのが難しい側面もみられます。逆に、生活場面でのストレスを緩和していくと、症状もやわらぐ可能性がありますね。
強迫症状が少しずつ落ち着いたきっかけ
心配事や困り事を話していく中で、「うちではこんな風に落ち着いてきた」という回復のヒントになりそうなお話も出てきました。
■本人の思い込みをほぐすこと
「去年、コロナをきっかけに何回も長時間かけて手を洗うようになった。手がひび割れていて、そこから菌が入ると余計不衛生になることを伝えるとおさまった」
”手を清潔に”といっても、程度が分からない場合もありますよね。本人が「こうしなきゃいけない」と思い込んでしまっている場合は、上記のように正しい知識を伝えたり、回数や時間を具体的に設定することもできそうですね。
■好きなことをきっかけに
「家から一歩も出られなかったが、月に数回ほどは好きなお弁当を買いに行ったり、好きなマイクラをするためのPCを見に行ったりできるようになってきた」
「ゲームの習い事で少しずつ外出できるようになった」
「見学に行ったオルタナティブスクールが合っていたようで、少し元気になってきた」
しっかりと休養がとれたら、好きなことをきっかけに外出を試したり、合う居場所を見つけるのもいいですね。
■信頼できる第三者や、対処法との出会い
「関わってもらっている心理士さんを信頼している様子で、教えてもらった呼吸法で少し落ち着いた」
「グループセッションの治療はまだ拒否しているが、自分でも治したい気持ちが出てきているのは進歩かな。少しずつ気持ちが落ち着いたり、自分への理解が出てきているのだと思う」
信頼できる人に出会い、自己理解を深めたり対処法を身につけていくことは、今後大人になってからも役立ちそうです。
■安心安全のために、お薬の力を借りる
「病院でお薬を処方され、確認行為は続いているが、パニックは減ってきた」
「クリニックでも診断の境界線むずかしいみたい。症状に対して、気持ちを落ち着けたり、睡眠を導入するお薬を処方されて飲んでいる。癇癪、自傷は消えた。外出前に1時間くらい悩むのはなくなった。落ち込むことは少なくなり、明るくなった」
医療機関にかかって服薬されている方も複数おられました。本人がとても苦しんでいる状態からなかなか抜け出せない場合は、情緒面のベースを整えるためにお薬の力を借りることも、選択肢のひとつですね。
こだわり行動と強迫症状の判別の難しさ
保護者会の中では、本人の発達特性からくる「こだわり行動」と、「強迫性障害」の症状は、どう区別すれば良いのか?という疑問も出されました。
「本人は痩せているけど、太るんじゃないかという不安を感じているようで、『アイス食べてもいいよね?1本じゃ太らないよね?』と私(母親)に毎回確認する。幼い頃にやっていたようにルールを書いて可視化する対応は今は嫌とのことで、口頭で確認することで落ち着くみたい。かかっている医療機関でも、はっきりと診断をくだすまではいかないけれど、そうならないように見守りましょうと言われている。でも正直、このままで大丈夫なのか心配も残る」
こだわり行動と強迫性障害の区別、あるいは治療が必要な段階かどうかは判断が難しいですよね。本人のこだわりや確認行動がエスカレートするのか、現状維持なのか、減っていくのか、長期的に観察しながらかかりつけの医療機関へ日常の様子をお伝えしていくと状態が把握しやすいと思います。困ったときに相談できるように、信頼できる医療機関とつながって経過をみてもらえると安心ですね。
保護者は、こんな心構えでいられたら…
それぞれのグループで出たお話を全体で共有した際、このようなご意見もみられました。
「我が子の状態を毎日みていると、病院に行く基準が分からなくなったり、医療機関も合うところを見つけるまでに大変なこともある。こうやって保護者同士の横のつながりで情報交換をしていくことは大事だと思う」
「子も親も波があるので、まぁいいやという気持ちも大切」
保護者同士でつながっておくことで、症状が強くなる前に気づくきっかけや、対処方法・相談先を知ることができそうですね。また、特性の強いお子さんによく起こることを共有することで、「うちだけじゃないんだ」と気持ちの余裕を持つことができる側面もありそうです。
みなさんの話を受けて、Branchスタッフからはこんなコメントもありました。
「こだわり行動については、以前受けた研修の中で『対象を増やす視点が重要』という話があった。こだわりをやめる・無くすのではなく、安心してこだわれる状況を作り、例えば3にこだわっていた子が6にも9にもこだわれるようになったら、世界が広がり生きやすくなるのではないか」
こだわる対象の数自体が増えることで、相対的に、一つの事柄に対する強迫観念が弱まるということもあるようです。
普段の生活ではなかなか話せる人がいない…そんな悩みも共有します
今回、デリケートな話題でもあったので、保護者会後のアンケートでは「家族以外では話す機会がないのでスッキリした気持ちになれた」という感想を頂きました。また、「時間的にまだまだ話し足りなかった」というお声もありました。
会の終盤では、「障害の告知について我が子へどのように伝えていますか?」という質問もあがったので、今後また深堀りする機会を作っていきたいと思います。
Branchでは、これからも保護者同士の悩みを共有し、ホッとする時間を持ったり、解決の糸口を見つけたりするサポートを行っていきます。
この記事を読んで、Branchオンラインフリースクールに興味を持たれた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
発達障害や不登校の子の「友だちができる。安心できる居場所」とは?
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