不登校のお子さんをお持ちのご家庭にとって、学校や担任の先生の気持ち・考えについて、不登校児に対して実のところどう思ってるんだろう?と気になりますよね。
今回、Branchでは、元公立小学校校長であり、現在は学校心理士並びに東京都特別支援教室巡回アドバイザーを務める福田晴一さんにインタビューをし、学校や担任の先生の立場として、率直な考えを聞かせていただきました。
併せて、実際にBranchを利用している保護者の方の、学校とのやり取りに関する実例や、やりとりの負担をほんの少し軽くする豆知識もご紹介します。
不登校児のこと、学校(担任の先生)はどう考えてる?
学校心理士 福田晴一さんに伺いました
元公立小学校校長。現在は東京学芸大学特命教授、学校心理士 兼 東京都特別支援教室巡回アドバイザーとして活躍中。
その傍ら、コミュニティスクールディレクターとして地域と学校の連携推進に関わり、また、株式会社LX DESIGNのアドバイザーとして学校内で進むDX化の支援を行うなど、多方面にわたる活動をしている。
不登校について、実際学校(担任の先生)はどう考えていますか?
不登校については、昭和の時代「登校拒否」から始まり、1991年に長期欠席日数の定義が年間50日から30日になったことで注目されるようになりました。
同時に、不登校の背景は一人ひとり複雑で「怠惰」ではないことが理解されるようになりました。
さらに平成になり、不登校の理解も進む中、文科省が「学校復帰」という言葉を払拭した影響は大きいと思います。
特に最近は「誰でもなりうる不登校」という考えも理解されています。
今や「積極的不登校」という言葉も聞かれ、20世紀とは大きな違いがあります。
ゆえに、最近の先生方は、管理職の理解推進もあり、学校復帰を第一にあげず児童生徒を理解し、保護者と連携することを大切に考えている方が多いです。
ただし、学校の先生方がとても忙しいということがあり、不登校児童の問題が最優先にはなりにくいことも一つの現実だと考えています。
また「学校だけが学びの場ではない」ということを視野に入れ始め、学校以外に学びの場を探す傾向も出てきたと思います。
学校復帰して登校してほしいでしょうか?
上述した内容が原則で、無理のない範囲で「学校復帰」が望めるのであれば、それが一番だと思う教員が多いです。
ですが、ケースバイケースで複雑な背景があるため、当該児童生徒と当該校の学びが合致しない時は、無理して「学校復帰」は望まないと思います。
しかし、その場合でも学校と保護者との連携は保つべきだと思います。
不登校の家庭でも学校と繋がっておく意味はありますか?
不登校の家庭でも、学校と繋がっておく意味は「ある」と思います。
理由の一つとして、特に中学校には義務教育の出口保障の役割があります。
よって、中学校は進学、就職等、卒業後の進路やキャリアに関する最新の情報を持っています。
それらを得るためにも学校とは繋がっておくといいと考えます。
定期的な連絡・報告でも良いと思います。
ですが、学校や担任が明らかに「繋がる必要性・価値」を見出していないようなら、保護者が負担になるだけなので、残念ですが淡々と籍を置くだけでも良いと考えます。
そういう学校・担任は少ないことを祈念しています。
もう一つの理由として、自分の経験からも、私は「繋がっておく意味はある」と思います。
「ある」と明言できる背景には、児童生徒理解があると思います。その意味は後々、価値あるものに転移するかもしれません。
保護者の方は不登校の先に引きこもりの心配や、先行きの不透明感、不安定さを感じるのは当然です。
ですが、先生は、保護者とは違った客観的な視点で繋がれると考えています。
実際に不登校だったけれど現在は社会で活躍している生徒を見てきているので、私はそう考えます。
だたし、学校とのやりとりで、保護者が負担を感じる時は、学校に要請して頻度を減らしてもらうことをお勧めします。
良かれと思ってたくさん連絡をする先生もいるので、「先生、すみません!もう少し頻度を落としてください!」と、本音を伝えてもらった方が、教師もうれしいものです。
保護者も本音を話せる人を、学校側に一人作っておくといいですね。
保護者も本音を話せる人を、学校側に一人作っておくといいですね
不登校児が学校復帰するために、学校側はどのような対応をとると良いとお考えですか?
特に、様々な発達特性により学校の環境が合わず、結果、不登校になっているお子さんも多数います。
昨今の教育界には「インクルーシブ教育」とか「合理的配慮」という言葉・内容や意味が、少しずつ浸透してきています。
よって、可能なら、学校の特別支援教育コーディネータやスクールカウンセラー、管理職を交えての校内ケース会議(※1)を開催するべきだと思います。
校内ケース会議を開く一番のメリットは、学校という組織全体で対応できるようになる点です。
本来なら、学校からケース会議開催の提案をすべきだと思いますが、それがない場合は保護者から依頼しても良いでしょう。
だたし、普段学校との繋がりがない状態で、突然開催を依頼すると学校としては驚いてしまいます。
ですので、月に1回でも連絡を取れていると嬉しいです。つまるところ、学校や先生も一人の人間なので。
また、読み書き障害から、授業参加への意欲低下、提出物等の未提出が散見されます。
その結果、友達からの言動で登校しぶりから不登校になるという構図が、推察されます。ここは私もすごく気にしています。
低学年の書字障害のアセスメントは急務だと思います。このような話をケース会議で話し合えるといいですね。
今は、端末使用でアクセシビリティも進んでいるので、保護者からの合理的配慮も進言すべきだと思います。
※1 支援が必要な子どもに対し、学校内の関係者でチームを作り、支援の体制や方針を検討する会議
Q.ちなみに、読み書きに困難のあるお子さんに対して、学校側は具体的にどのようなことができるでしょうか?
A.端末使用による「読み上げ」「ルビ」「文字の拡大」「ハイライト」「板書撮影」、宿題の弾力化(漢字の書き取りの制限)など対応はあります。
また、東京の場合では、全公立小中学校に設置されている「校内通級指導学級」の活用が良いと思います。
他県は、保護者が近隣の通級指導学級に送迎となります。
最近は、校内通級を不登校対応、学校復帰に向けてのソフトランディングとしている中間施設的に活用しているケースもみられます。
Q.今年度(2024年度)より、合理的配慮の義務化が、私立校や企業にも義務付けられるようになりました。私立校についても同様に支援してもらえると考えてよいでしょうか?
A.もちろんです。しかし、私立校はその学校の教育方針に合わないと判断された場合、受け入れないこともあるので、そこは理解しておいた方がいいでしょう。
現在は、テクノロジーを利用して簡単にできることも多いので、どんどん進言して自分から配慮を勝ち取ることも大切です。
合理的配慮の向こうにはユニバーサルデザインがあります。テストの文字を大きくしたり、ルビをふったりすることは合理的配慮に当たります。クラス全員にやれば、ほかの子にもメリットが生まれます。
個別のケース、背景を一人ひとり考えて、一緒に探っていこうという関係性を築いていけるといいですね。
不登校でも進路や進学の相談に乗ってもらえますか?
もちろん、学校は当然に進路相談には対応します、しなくてはいけないと考えます。
もし、学校がしっかりと対応していなかったら、教育委員会に進言すべきです。
この場合も、学校と連絡を取っている場合は、随時相談すればよいでしょう。
学校と繋がっていない場合は、学年が変わった時や、最終学年の場合は進路について問い合わせが来たタイミングで「改めて相談してもいいですか?」とコンタクトを取るのもいいです。
相談先としては、担任やスクールカウンセラー、部活の顧問など、保護者が話しやすい先生に「進路について相談したいが誰に聞けばいい?」と聞いてみるといいと思います。
こういう時にも、保護者の方にとって「本音を言える学校関係者」が一人いるといいですね。
学校とどんな情報を共有しておいたほうがいいでしょうか?
- 家での生活の様子(主に健康状態、心身の安定、生活リズムなど)
- 進学に向けての気持ちや構え(どんな進学、進路を考えているか)
- 学習面の現状(全く取り組んでいないとか、気にしつつ少しは取り組んでいる…)
- そして、学校に何を支援して欲しいのか…(合理的配慮の視点も加味して)
を共有してほしいと思います。
そのためにも、できるのであれば学校とニュートラルに意見交換・情報交換できる関係性が望まれます。
担任に余力があれば、担任からアプローチすることがベストですが、今のブラックと言われる学校現場では、期待値が低い学校・担任もいることは残念ながら事実だとも思います。
これからの学校としての不登校支援について教えてください
教育振興基本計画(直近の第4期)の基本施策に「誰一人取り残さない」という文言が盛り込まれました。
その中に「不登校児童生徒への支援の推進」「特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援」が定められました。
これを受けて、文科省は不登校特例校を300校設置することを目指しているところです。
特に不登校支援は経験値が大きく影響する部分が多いため、早急な人材の育成が望まれているところです。
「正解」はありません。
だから、一人一人のバックグラウンドをよく見て、保護者と学校で一緒に探っていきたいと思います。
「正解」はありません。
だから、一人一人のバックグラウンドをよく見て、保護者と学校で一緒に探っていきたいと思います。
不登校家庭の学校に対するリアルな要望とやりとり
不登校のお子さんを持つ保護者の方の「在籍校へのやり取り」。
学校との繋がりを持つ良さは理解できても、手間だったり、心理的プレッシャーもあったり、担任の先生と合わなかったりと、保護者の方の負担が大きいです。
発達障害や不登校のお悩みを抱えるご家庭が集まるBranchのオンラインコミュニティに、このような質問が来ました。
在籍校とのやり取りについて質問させてください!
担任に欠席連絡をすると、登校できない理由を強く求められました。
発達の凸凹があるという理由は認められず、ストレスと失望から、今は完全に没交渉です。
ですが、家庭教師の先生と話している中で、学校とのやり取りはしておいたほうがいいのではと提案されました。
頑張ってみようという気持ちはあるものの、すごいストレスを感じるし、近い未来に登校できるようになるとも思えないし、何のためにどれくらい頑張ればいいかが分かりません。
今は不登校だけど、担任の先生と状況の共有とかされている方がいらっしゃったら、どういうことを目的に、どういうことをされているのか、よかったら教えてください
このような悩みを抱えている保護者の方は多くいらっしゃいます。
では、実際に保護者の方はどのようなことを学校と情報共有をしているのでしょうか。
不登校のご家庭と学校との情報共有
学校復帰のための相談
お子さんに「学校に通いたい」という気持ちがある場合、
- 付き添い登校
- 別室登校
- 放課後登校
- 負荷の少ない一部の授業
- 給食、部活への参加
など、段階的に様々なアプローチをしています。
ただし、お子さんの気持ちが学校に向いていない場合は逆効果になることも多いので、保護者の方は焦らずに、お子さんの気持ちを第一に考えることが大切です。
欠席連絡や配布物の受け渡しの頻度の相談
学校とのやりとりの頻度が多く、時間的にも精神的にも負担を感じる場合は、連絡方法の変更や、頻度を減らしてもらうように相談します。
この時に簡単な近況報告を兼ねると、学校との繋がりを保つこともできます。
学校行事や課外活動への参加の相談
不登校のお子さんが、課外活動への参加に意欲を見せることは珍しくありません。
お子さんの希望に合わせて、学校にどのような対応をお願いできるか相談し、お互いの着地点を擦り合わせます。
進路相談
中学校は「義務教育の出口」という役割があるため、卒業後の情報を多く持っています。
卒業後の進路を考えるうえでも、学校と繋がりを持っておくことは一つの選択肢となります。
それ以外にも、
- 適応指導教室利用のために連携
- フリースクールとの連携(出席認定)
など、お子さんの状況に合わせた相談をすることができます。
学校とのやり取り【Branch保護者の方の声】
実際に、保護者の方はどのように学校とやり取りしているのでしょう。
Branchを利用している保護者の方の声を聞いてみました。
教育的ニーズを話し合う
教育委員会の在籍小学校担当者に、中学校に早めに連絡とって状況をお伝えしたいですと言ったら、「必要ない」と言われました。
文部科学省の資料「障がいのある児童生徒の就学先決定について(手続きの流れ)」を見せて、
「彼の教育的ニーズを話し合うのは、法律で決まってるのでは?」と訴えて教育委員会と小・中の先生と私との話し合うことになりました。
うちの場合は巡回相談の先生は味方になってくれていて、根回しをして下さいます。
事後報告的にあいさつに伺う
身の振り方がはっきりと決まる年明けから年度末くらいに、事後報告的に、ご挨拶に伺おうかなと思っています。
在籍中学校への具体的な連絡と手続きをする
自治体から、秋くらいに「あなたの息子さんはこの学校に進みます」みたいな学区通知が来ました。
2月半ば、在籍予定中学の副校長に、フリースクールへ行くこと、在籍中への出席は予定していないことを伝えたうえで、
入学前に必要な手続きなどがないか確認しました。
入学後、担任や管理職とご挨拶をし教科書や学生証の受け取りなどをしました。PTAは非加入です。
6月頃、健康診断(身体測定・内科・歯科・尿検査など)を、欠席者と同じように指定医で受けられるよう手配しました。
また、本人が放課後時間に保健室で身体測定や聴力・視力検査を受け、担任や副校長と挨拶をしました。
1学期終わりに通知表を取りに行きました。フリースクールの出席数を成績表の出席日数に反映してもらっています。
たまに担任からの電話があり、基本的には、在籍生の権利に関わることで「○○できますが、どうしますか?」「○○が配られますが、どうしますか?」「○○の集団購入がありますが買いますか?」という確認です。
実例を見ると、お子さんの状況や特性を端的に伝え、お子さんの希望を優先したうえで、学校と連携し実現可能な方法を模索しているケースが多いことが分かります。
学校との相談窓口
では、実際の相談窓口はどうすればいいでしょうか。
福田さんも「学校に一人本音を話せる人がいるといい」と仰っていましたが、担任に限らず、下記の方々に相談している保護者の方が多いようです。
- 担任
- 養護教諭や部活の顧問、学年主任など、担任以外の先生
- 特別支援コーディネーター
- スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー
- 校長、副校長 など
学校との相談窓口【Branch保護者の方の声】
窓口を変える
・中1息子(学区外、支援級):
担任から月1で電話、定期テストの時に家庭訪問(2ヶ月に1回くらい)。状況確認程度。
・小5娘(学区内、普通級):
週1スクールカウンセラーに会うため放課後登校。その帰りに職員室前で担任と雑談(マイクラの話)。
以前、息子の担任とどうしても合わなかったときは、他校の通級の先生が窓口になってくれました。
事務的な手続き窓口を決め、担任とは配布物受け取りのみ
うちは完全不登校歴が長めで、学校に復帰する予定がなく、適応指導教室をメインにしているため、担任とやりとりは配布物のみで、そのほか事務的な手続きは、副校長先生が窓口になっています。
家族以外の人との関係を作るため、校長先生との個別対応
週1回、校長先生と個別対応の時間を午前中につくってもらい、校長室で過ごしています。本人が「個別なら学校行ってもいいよ」と言って楽しんでいるのでお願いしています。
学校とやりとりする1番の目的は、家族以外の人と関係をつくることです。
2番目は、不登校状態の子どもに対して、学校と協力してどう対応するのか一緒に考えてもらうためです。
今の校長は話を重ねるうちに、色々考えてくれはじめているように感じるので、このまま続けてみようかなと思ってます。
登校時間前の朝早くに登校して担任に会い、授業の内容を教えてもらう
登校時間の20分くらい前、私と一緒に登校して、担任に会っています。
授業の内容をざっくり教えてもらい、家でできる部分を選んで勉強するのに助かっています。
毎朝歩くのも目的の1つです。
登校刺激を一切しない、安心して会える担任なので毎朝続いています。
不登校家庭の負担軽減のためのTips
学校とのやりとりの頻度が多くて負担、そんな時に負担を減らせるちょっとした豆知識をお伝えします。
- 欠席連絡、配布物の受け渡しの頻度は、学校に相談して頻度を減らしてもらいましょう
- 給食費は停止できます。欠席が長期にわたる場合は学校に相談してみましょう
- 制服ついても、在籍校に登校しない場合は購入について相談してみることができます
先生方もお子さんのために「良かれ」と思って様々な提案をしてくださいます。
ただ、そのお気持ちが負担になってしまう場合は、先生に一度本音で話して連絡頻度を減らしてもらいましょう。
おわりに ー 学校や担任は不登校のお子さんの力になりたいと思っている
福田さんのお話からは、
学校や担任の気持ちとしては「登校のお子さんの力になりたいと考えている」
ということがはっきり分かりました。
同時に、対応は学校によってさまざまであるというリアルな声も聞こえてきます。
担任の先生だけを窓口とするよりも、
ご自身にあった相談窓口を見つけ、ご自身のご家庭に必要なものは何か具体的に認識できるとスムーズなようです。
事務的な手続きだけで良いのか、学校にも「家族以外のつながり」を求めるのかを考えると、
必要なものが見えてくるかもしれません。
学校復帰が目的ではない場合でも、無理のない範囲で学校と繋がりを持ちながら、適応指導教室、不登校特例校、フリスク、オンライン家庭教師、サードプレイスの活用等をして、長い目で見守っていかれると良いですね。
「好き」で安心とつながりを育むサードプレイス
この記事を書いているBranchは、不登校・発達障害のお子さま向けの「学校外で友だちができる」Branchコミュニティを運営していて、以下のような特徴があります。
- 「学校行きたくない」という気持ちを抱え、家族以外の人との関わりが減ってしまった不登校のお子さま達が自分の「好きなこと」をきっかけに安心できる居場所や、友達ができるようなサービス。
- NHKや日テレなど多くのメディアにも紹介され、本田秀夫先生との対談や、厚生労働省のイベントの登壇実績もあり、サービス継続率は約95%以上。
- 小学校低学年のお子さまはもちろん、どんな子でも楽しく参加できるようにスタッフがお子さま一人ひとりに寄り添ったサポートを徹底。
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